item Context of Waterを公開

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written 2012/11/5 [ updated 2012/11/10 ]

 九重奏曲、Water Contextsあらため「Context of Water(水の文脈)」が完成したので、とりあえず公開。
「とりあえず」というのは、特に楽譜において、まだ修正すべき箇所が沢山ありそうなため、いったん公開してから後日、こっそりちょこちょこ修正して再アップしようと企んでいるからだ。せっかくの「大曲(私にしては)」なので、楽曲同様、楽譜も時間をかけてマシにしていきたいと思っている。

 私の「いつもの」和声感を伴う無調音楽だが、時間をかけて作っただけあって、何度も聴き返し、既に書いた箇所に戻っては「甘い音にヤキを入れる」作業を繰り返した。だからいつもより不協和音の響きが強いと思う。クセナキス的な音に憧れ、一流の「厳しい」現代音楽作品を聴きながら、自分の音楽との比較を行った。私は自分の「甘さ」を糾弾し、より「現代的な」音に、少しでも近づこうとした。
 どうやら「現代的であること」とは、私にとっては「厳しさ」とほぼ同義であるらしい。
 強いて標題音楽的な解釈で言うなら、和声的に調和のある響きが「人間の文化におけるコンテクスト(人間的なコンテクスト=言説における文脈)」だとすると、それが「」という圧倒的異質さにぶつかったとき、その差異と軋轢から、不協和音が生まれるのである。は人間的な「意味」を無化し、死にも似た静かさを絶えず喚起しながら、世界を浸食し続ける。人々は日常のコンテクストの失効に恐れ、傷つきながら、「水のコンテクスト」に対峙しなければならない。もちろんここで言う「水」とは、精神=身体に内在するさまざまな亀裂あるいは無意味=死のメタファーである。
 こうした「甘え」と「破綻」、「恐れ」と「覚醒」「決意」などといった諸要素を内包した、無意識的な複合物としての音楽。異様さを伴い、理性をこえて感情をゆさぶるような、そんな音楽を書いてみたかった。このようなアウトラインは、今回に限った話ではないが。

 時間をかけて作ったとはいえ、制作開始は9月下旬のようだから、8分ほどのアンサンブル作品に1ヶ月半というのは、そんなに遅筆でもないだろう。平日はサラリーマン稼業している身であれば、こんなものかもしれない。DTMerは皆さん曲を作るのが速い傾向にあるが、人はともかく自分の場合、あまり速く作ってもストレスがたまり絶望感が強まって、良くない。今回は「あせって」作ろうとしがちな自分の心理をいくらか抑え、多少なりとも甘ったれた煩悩を「滅する」ことができたかもしれない。

 この曲は、後日、動画を作成してYouTubeに送り込むつもりだが、8分弱の長さでは映像と音楽だけでなく、言葉がサイレント映画みたいにときどき入ったほうが面白いと考え、先日書いたように、以下の詩?のようなものを付加する予定。
 英語の堪能なhiro banriさんとTadashi Maedaさんがご協力下さった英訳も使わせていただきます。

 ・・・それにしても楽譜づくりは、私にとっては非常に面倒だ。手書き譜ならそうでもないだろうが、楽譜専用ソフトでないLogicでやっているので、ちまちまと細かく退屈な作業が続くのである。おまけに、アカデミックな高等音楽教育を受けていないこともあり、楽譜の書き方ってよくわからない。
 MIDI信号のベロシティ(音の強弱)値は128段階で、中央値は64となる。自分としても、「強くもなく弱くもなく、ふつうに演奏する」アーティキュレーションだとDAW(シーケンサー)上、64付近で音を設定しているのだが、ご存じのように、西洋楽譜の強弱記号には中央値が存在しない。mpとmfの中間がないのだ。
 これはかなり困る。ベロシティ64の音を、mpかmfかどちらかに決めて記入しないといけない。前後の脈絡も考慮しながらpp、p、mp、mf、f、ffという6段階の指定に振り分けるわけだが、ベロシティの数値から単に機械的に分けるのでなく、「気分」というか「情緒」というか、相対的な音の強さを直感的に演奏者が理解するように書かなければならない。これが実に難しいのだ。というか、考えるのがしんどい。
 おまけにLogicでは「スラー」をキレイに書くのが結構難しいので、私の楽譜にはスラーがほとんどない(笑)。
 楽譜づくりはいつまでも苦手である。手書きの楽譜にした方が、作るのはずっとラクだろうが、判読不能なくらいに汚いだろう。

2012年11月10日、演奏(音源)、楽譜を改訂し、再アップしました。

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