item 「A Long Moment」完成

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written 2013/8/3

Bogus Birds」を書き上げた直後、ある方から「もっと遅い曲を書いて下さい」と言われたので、予定を変更し、翌7月31日から「遅い曲」を書き始め、5日間弱で完成させてしまった。「A Long Moment」。テンポが遅く、演奏も比較的容易に、音数を少なくしたから、こういう作業はDTMでも早く完了できるようだ。
 前作に引き続き、Finaleからの作曲作業である。

A Long Moment (from "23 Preludes for Piano")

掲載ページ: http://www.signes.jp/musique/index.php?id=739

2013/8/3完成 4分01秒

MP3:http://www.signes.jp/musique/Preludes/aLongMoment.mp3

楽譜:http://www.signes.jp/musique/Preludes/aLongMoment.pdf

 最近の私の作風が微妙に変化してきた点のひとつは、「構成」が復帰しつつあることだ。
 かつて、西洋古楽に興味を抱いたときから、私はモティーフの反復を避け、「主題を展開」なんかせずに、つぎからつぎへと即興的に楽節を積み上げてゆく流動体書法を好んできた。これは「秩序=権力」に対する反逆でもあったが、最近、「系の自己生成的秩序」を念頭に、モティーフを反復し、ある種の「秩序」が顕現するような書法へと移ってきている。
 コンピュータのプログラムによって生成されたランダムな音の列であれば、偶然以外にモティーフの反復というのは起こらない。しかし実際には、我々の文化における音楽では、音組織は絶えず「主体」という媒介を介して進展する。たとえランダムな音の列であっても、われわれの心理はそこに、何らかのゲシュタルトを見いだそうと欲する。聴く者(作り手もまずは自分の音を聴く者である)が音そのものに対し、能動的に関与し、そこに秩序を見ようと試みるのである。
 この場合の「秩序」は、たぶん、私が嫌っていた「秩序=権力」ではない。いやもしかしたらそれは同じものなのかもしれないが、音が「私」を媒介として自己組織化してゆく作用が何らかの「秩序」に至るとするならば、私はそれを受け入れようと思うように変わってきたのだ。

 しかし私は新古典主義に戻ろうとは思っていない。主題の反復、ある種の「展開」を持ちながら、「新古典主義」とは異なる次元に音組織を展開できるだろうか?
 私は今、夢中になって問いかける。創作とは問いかけである。私はまたすぐ、次の曲へと取りかかるだろう。

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