item 「タンゴ」を書いて

textes ... 自作解析

written 2011/12/16

 曲の完成とMP3公開から1週間経ってしまったが、新曲「Tango/Love for the People」を巡って書き留めておく。

 まさか自分が「タンゴ」らしきものを書くことになるとは思っていなかった。思いつきで作ることにしたのだが、エレクトロニカ的な要素、現代音楽的な要素などをどう混ぜ込んでいくかなど、いろいろ考えた末、ストレートな調性音楽、それもナンパな短調の情緒やメロドラマ性を打ち出し、バンドネオン(2台)、ピアノ、ベースはサンプリング音でふつうに演奏させた(やはりヴァイオリンも入れた方がそれらしかったか?)。

 序奏のあとに始まるタンゴ部分は、4分の3拍子と4拍子が交互に規則的に交代する変拍子になっている。
 リズムパターンはピアソラの「3+3+2」に対し、「3+3+3+3+2」という変則型。

 ふつうに主和音・属和音を用いる調性音楽だが、突飛な転調をいつものように入れて、相変わらずわがままをやっている。

 もともと「PRISM」でやっていた独自のエレクトロニカ?路線から、伝統的な楽器を用いた現代音楽に回帰したのは、エレクトロニカふうサウンドの中で現代音楽的なことをやるのに、今ひとつ「現代性」が足りないと自分で感じたからだった。「現代性」とは何かを今一度探究し直して再度、エレクトロニカに挑戦するつもりだった。
 しかし今回は思いつきで「タンゴ」という予定外の方向に走ることになり、明快で親しみやすい旋律を核に曲を作るという、ほんらいはごく一般的な曲作りを久々に体験し、自分でも新鮮な思いだった。
 最近の私の作品にしては珍しく、聴いてくださった方の受けもよさそうだ。(といっても、たくさんの方に聴いていただけたとは言えないけれども。)
 まあ、誰にどう思われようとも、同じことの繰り返しは耐え難く、この手の音楽を「もう一度」やることはないだろう。
 
 モダニズムやフュージョンの出来損ないのような昔の習作群やら、「残酷な小曲集」(2007)、「断絶詩集」(2009)といった、今聴くと実験的としか言いようのない試作品の数々を経て、最近になってようやく、自分なりにサウンドをまとめることができるようになってきたという気がする(もちろん完成度はまだまだだけど)。
 クラシック/現代音楽とポピュラーミュージックとのはざまで、双方向への意味づけがなされるような、独自性のある音楽を追求してみたいという、私のおぼろげな目標にはまだ達していないが、そろそろ自分のもつ可能性の限界もいいかげんわかってきたし、体力・集中力も衰えてきたようだし、自分の無能力も孤独も身にしみた。いつまで私は「作り」続けるのだろう?
 すっかりやめてしまうと、それはそれでひどく寂しくもなることは間違いないから、やっぱりまだ書くことになるのか?
 とりあえず、近いうちに作りたいと思っている2、3曲分のアイディアがある。けれども、いましばらく休憩して、いろんな音楽をじっくり鑑賞したいと思っている。

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