オリヴィエ・メシアン
written 2003/9/6 [ updated 2006/6/2 ]
Messiaen, Olivier (1908-1992)
メシアンの魅力は晦渋な思想性とか実験性であるよりも
(それらはこの作曲家の主要な側面をなしているが)、
触覚的でときに非常に美しく響くその音感覚にあるのではないだろうか。
その神秘的なうつくしい和声感覚はごく初期の、
ドビュッシー風なピアノ作品から既にうかがわれる。
聴覚が視覚(色彩)と連動する共感覚を、メシアンも持っていたようだ。
彼の方法は「全面的セリ―技法」「移調の限られた旋法」とか、
世界中の鳥の鳴き声の採譜とか、
また精神面ではカトリシズムなどといった
多彩な要素に彩られている。
やはりこの作曲家は20世紀の巨人だ。
長大な大曲の山にはちょっと辟易させられるが、そこには真に興味深い
音楽がある。
特に、その異様なピアノ曲は私に様々な示唆を与えてくれる。
主の降誕 (1935)
メシアンはオルガンのために興味深い、重要な作品をいくつか書いているようだ。 宗教性の異様な展開。
世の終わりのための四重奏曲 (1941)
極めて印象的な、傑出した作品。いつもより抑制された書法が美しい。
幼児イエズスに注ぐ20のまなざし (1944)
独奏ピアノの大曲。ここに収められた20曲は多彩かつ豊かであり、
神秘的なテーマをもち、異様な部分を含みながらも、色彩感は美しい。
第6曲には実に複雑で奇怪なフーガが含まれている。
トゥーランガリラ交響曲 (1948)
一般には代表作と目されるもの。例によって作曲者自身により難解な注釈が施されている。オンド・マルトノを使用している。
ややこけおどし的なオーバー・アクションが目につくような気がするが、
どうだろうか。
鳥のカタログ (1958)
世界各地を、鳥の声を採譜しながら歩いたというメシアンの、この面での集大成。
しかし、同様の音楽は「鳥の小スケッチ」(1985)など、他にも遺している。
「鳥のカタログ」はCDで3枚を必要とする超大曲のピアノ音楽だ。
鳥の声を模しているだけではなく、メシアン特有のいろいろな要素も混じっているが、言語道断な独創性が驚愕を呼ぶ。ここには新しい音楽の姿がある。
クロノクロミー (1960)
20分超くらいのオーケストラ作品。なかなか傑出した音楽だ。 様々な語法が巧みに織り込まれており、筆致は実に円熟している。
われ死者の復活を待ち望む (1964)
戦争の犠牲者の追悼のために書かれた曲。 打楽器の用法が不思議なサウンドを作り出している。終曲が圧倒的。