ジャン・コクトー
written 2003/9/6 [ updated 2006/5/31 ]
Cocteau, Jean (1889-1963)
極めて多才なこの人物は、近代フランスのモダニズムのある局面を代表している。当時フランスを席巻していたダダ・シュルレアリスムや末期ロマンティシズムからは遠く離れた場所で、知的であたらしい美の感覚と鋭い批評性・エスプリからなる芸術世界を確立したのだ。
多くの詩・劇・小説・エッセイ、映画では「美女と野獣」などを製作し、音楽においてはエリック・サティを絶賛、「フランス六人組」の知的な核心に存在した。また、細い線により描出した独特な絵画も、とても魅力的だ。
コクトーの文章は斬新な比喩やひねった言い回しに満ちており、そのテクストを噛み砕くこと自体に快楽がある。
しかし、彼の美の感覚には、意外と古典的な面がある。非常な洗練と新しさの覆いに紛れて、わかりづらいのだが。
大股開き (1923)
とても美しい青春小説。みずみずしくて涙さえ誘う。
ぼく自身 あるいは 困難な存在 (1974)
この書物は私の愛読書の一つ。ねじくれた文体の中に、輝かしいアフォリズムがあふれている。