Rock Number - バリトン、ヴァイオリン、2本のフルート、ピアノのための
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written 2023/6/16
低音の出る楽器が少なく、もちろんエレキギターやドラムスも無くあまりにも相応しくない編成であえて「ロックらしく」書く作業は、そののためにかえって「ロック的なカッコよさの美学や意味の体系の核心とは何か」というラジカルな探究に誘ってくれた。
ロックのシンプルさをも私は敬愛している。無二のキャラクターであった忌野清志郎さんの曲を学生時代ずっと聴いてほとんど覚えていたし、ストーンズやヴァン・ヘイレンなんかにも馴染んでいた。近年は北欧のメロディアスなヘヴィ・メタルも好きでよく聴いている。
シンプルである種野蛮なパワーを、教養あるスノッブは蔑みがちではあるが、そこには無視できない美的真実があるのかもしれないじゃないかと思う。
20世紀後半において、さほど高度な音楽的知識(歴史や思想)が無くても、ギターと歌さえあればステージに上れるかもしれないと大量の若者が夢見て、目指した。ロックとは、世界各国の若者たちが国境を越えた協同作業によって作り出した「新しい民族音楽」なのではないか。ロックの各曲は旋律もサウンドも歌詞も互いに似通っていたり、どこかで聴いたようなフレーズが平然と繰り返されるが、これは、彼らが一つの巨大な民族として結集し、共有される同種のパロール(発話)を夥しく生み出すための特有の言語体系であり、装置であったからだろう。無限に生み出されるパロールは、全体として大きなうねりを生み、世界を席巻し、その大規模さゆえに経済的にも大成功を果たした。この巨大な文化は当初から音楽だけではなく、特徴的なファッションや「生き方」「思想」「感性」をも伴っていた。
同時代の友人らと違い、私は幼少の頃にロックに馴染むことはなかった。だから私はロックを興味深い「対象」として観察する。
ここでは破天荒な私好みの転調やフガートなども持ち込み、真似だけでなく「自分を偽らない」正直さをも打ち出した。それよって、「やる事はやったから」と開き直るアリバイを作っておいたのかもしれない。しかしそんな変なことばかりやっているから、私はいつも、結局はどこにも属せない「コウモリ」のような存在になってしまうのだが。
これも2024年の作曲個展のために作成した曲で、ボカロ曲ではなく、クラシックのバリトン歌手が歌うという点を考慮し、実際はどうなるか想像しながら聴いてみて欲しい。
スコア:
http://www.signes.jp/musique/Concert2024/RockNumber/RockNumber_Score.pdf
バリトン:
http://www.signes.jp/musique/Concert2024/RockNumber/RockNumber_Baritone.pdf
ヴァイオリン:
http://www.signes.jp/musique/Concert2024/RockNumber/RockNumber_Violin.pdf
フルート1:
http://www.signes.jp/musique/Concert2024/RockNumber/RockNumber_Flute1.pdf
フルート2:
http://www.signes.jp/musique/Concert2024/RockNumber/RockNumber_Flute2.pdf
ピアノ:
http://www.signes.jp/musique/Concert2024/RockNumber/RockNumber_Piano.pdf
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