Pisces for Flute Solo
... composition > 独奏曲(ピアノ以外)
written 2014/3/30
譜面: http://www.signes.jp/musique/Chamber/Pisces.pdf
エクアドルの前田ただしさんとの縁がきっかけとなり、次いでイタリアのダニエーレ・コロンボさんとも縁が出来てヴァイオリン独奏曲を数曲書き、先日は初のチェロ独奏曲「Delphinus」を完成、今度はC管のフルート・ソロの曲を試みた。
木管楽器となると基本的に重音がないから完全に単旋律。息継ぎの問題もあるからフレーズにも限界があるし、この作曲は相当難しいだろうと思っていた。が、そうではない。書いていてとても楽しいことに驚いた。
弦楽器も木管楽器も、独奏曲の場合、変化にとぼしくモノクロームな音像になりそうな気がするが、これは私がコンピュータ音源で作曲しているせいかもしれない。現実のヴァイオリンやフルートは、微細に音色が変化しうる楽器であり、実際に演奏家の手になると十人十色の多彩さを現前する。
本当は、私が好んできたピアノの方が、モノクロームに近いはずなのだ。
ピアノ曲で単調さを避けるために、私はさまざまな「和音」で各瞬間を色づけようとするのだが、「和音に頼りすぎる」という傾向に陥るのが常だった。
ヴァイオリンやフルートの独奏曲では、「和音」はほとんど使えないから、ピアノ曲を書くときとは違う書法を私は探らなければならなかった。
そしてようやく、意外にも、和音は「必要ではない」ということに気づいた。
私の書く歌謡性の強い旋律は、それ自体が、瞬間瞬間に何らかの<音階>を想起させる。そして複数のミニマムな<音階>が素早くチェンジするかのような音型を私は書くので、和音が無くても、色彩感を変えてゆくことが可能なのだ。この独奏曲シリーズはこのような「発見」に到達し、虚飾を削ぎ落とし、旋律とリズムを自在にコントロールする技術を身につけ、その「純粋さ」のなかで更なる可能性を探索するための、私の修練の旅だったのである。
既存のフルート独奏曲は、私の知る限り、遅いテンポで波形を微妙に揺らすような曲が多いようだが、私は速めのテンポで、フルートの特性のひとつ「機敏さ」を魚群のイメージに重ねた。
さて、これは実際に演奏されたらどんな風に聞こえてくるのだろうか。コンピュータの音源とは異なって、強いアタックでは息が漏れ出るような、多様な変化が付け加わるはずだ。是非聴いてみたいものだが、いつかそんな日が実現するだろうか。
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