Catchy-T (feat. 巡音ルカ)
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written 2021/5/4
前作「Their Metallic Hearts」が、変拍子と転調を駆使したマニアックなメタルではあるものの、メロディにエモーショナルな盛り上がりがあるので、割と一般のリスナーにも受け入れられるかも。などと期待していたのがものの見事に大コケし、ほぼ完全な無反応を喰らった。これにはさすがに参ってしまった。
その悔しさから、「次はホントにウケ狙いで曲書いてみる」と決意したのが、本作「キャッチー・T」の創作動機である。
またまたメタル調を基本とし、今度は変拍子を封印してみる。コード進行もありふれた常套語法の範囲内にとどめようと最初思ったが、実際に書いてみると実につまらなくなってしまい、結局自分の嗜好で飛躍的な転調を駆使するようになってしまった。
転調は、多少音楽をかじっている方々でも、絶対音感を持っている人や聴音の訓練をした人でなければ聴いていて気づかないことがおおいだろうが、それでも、和声進行というものは人間の情動に前意識的に作用して来る不思議と生理的なものであり、上手い転調が出来ればリスナーを「何故か」興奮させたり感動させたり出来るものだと考えている。
本作のヒントとして、スウェーデン出身の有名なメロコア系メタルバンド「アマランス Amaranthe」の、特に2018年のアルバム「Helix」(の2021年バージョン?)及び2014年の「Massive Addictive」を聴きまくった。これは本当にキャッチーな、すこぶるメロディアスな音楽で、「メタルがこんなにキャッチーでいいの?」と最初驚愕したものだ。特に両方の冒頭の「ザ・スコア」「ダイナマイト」なんてポップすぎて、上がる上がる。女性ボーカルもパワフルかつソウルフルで、非常に良い。
そうしたPOPさ、キャッチーさ、キッチュさを核心として制作した本作「キャッチー・T」だが、サウンドにもうちょっとメタル的な低音域の重圧感を持たせたかったような気もするし、ギターなどの演奏データも細部まではあまり作り込んでいない。後半は少ない日数で変な焦燥感の中で書いたのだが、自分自身の音楽的ポジションについてのモロな歌詞に浸りこんでいたためか、メンタル的に追い込まれ危うい状態にまで至った。そこから逃げるようにして仕上げてしまったのである。
このため、「ウケ狙い」のはずだったものの、やっぱりこれは「受けない」のだろうなと現在は諦めてもいる。とにかく大急ぎで次々と転調していく音楽性は、リスナーを安心させないのだ。
あと、アマランスはもっとシンセ音を大量に駆使してとんでもなくキッチュな文体を作り出しているのだが、私の本作ではツインギターのメタルバンドを形成するだけで精一杯だったような気がする。
だからまだまだ足りない。もっとアマランスのような派手派手なキャッチーさを追求し、体得してみたい。
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